ほんの少しぬれただけ、手枕の袖を(2)和泉式部日記から
2.わざと冗談のように
釈文:「耳にはとまらぬにしも侍らず。よし見給へ、手枕の袖忘れ侍るをりや侍る』と、たはぶれごとに言ひなして、あはれなりつる夜の気色も」
選字は「耳爾盤と万羅ぬ爾亭も侍ら春 よ志見多万遍手枕の袖王須連八へ類をりや 侍ると堂は布連ことに言ひ奈して阿者 禮夜の気色も」
鑑賞:「よし見給へ」まあ見ていてください。「たはぶれごとに」わざと冗談のように言い紛らして。
宮の御歌に返歌しなかったことをごまかすように、冗談めかして「手枕の袖を忘れませんよ」と告げる女を愛しい人と見る宮がいる。
参考文献:和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫