手枕の袖・陰暦十月に(1)和泉式部日記から

1.十月十日に
釈文:「十月十日ほどにおはしたり。奥は暗くておそろしければ、端近くうちふさせ給ひて、あはれなることの限りのたまはするに、かひなくはあらず、月は曇り曇りしぐるるほどなり。」

選字は「十月十日ほと爾お者し多里奥盤暗久て於そろ志 希れ者端ち可九う地ふさ勢多ま比てあ盤連なる こ登の限り能多まは春る耳可飛那久者あら寸 月盤久茂里九もり志倶るヽ本と奈利」

鑑賞:「奥は暗くて」は後の「月は、曇り曇り・・・」に呼応する。「かひなくはあらず」もののあはれを知るもの同士として、女は宮さまを共に語るに値する相手として認めている。

参考文献:和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫