初夏の暁、更衣の日に(1)和漢朗詠集より

1.壁へ背を向けた燈には

立夏が過ぎ、暦の上ばかりでなく初夏の訪れを感じる季節に
釈文:「背壁残燈経宿焔開箱衣帯年香」白

書き下し文は「壁に背ける燈は箱を経たる焔を残せり 箱を開ける衣は年を隔てたる香を帯びたり」

鑑賞:「壁に背ける燈」「背壁」は光をこちらに向け、壁の方へ背を向けること。底本には「残燈」とあるが「燈残」の誤りか。

『白氏文集』「早春、暁に興く、夢得に贈る」詩

現代語にすると「初夏の暁、壁の方に背を向けた燈には、一晩中燃え続けた炎が残っている。今日は更衣で箱を開いて取り出した衣には、去年の香をまだ帯びている。」

参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫