旧暦三月三日桃に付して口ずさむ(3)和漢朗詠集から
3.曲水遥かなり
釈文:「我后一日之澤 万機之餘 曲水雖遥 遺塵雖絶 書巴字而知地勢 思魏文以翫風流。蓋志之所之 謹上小序」
書き下し文は「我が后一日の沢、万機の余、曲水遙かなりといへども、遺塵絶えんたりといへども、巴の字を書いて地勢を知り、魏文を思うて風流を翫ぶ。蓋し志の之くところ、謹んで小序を上(たてまつ)る」
鑑賞:「曲水遙かなり」曲水の宴は周の代より起るといわれる。その由来は「周公邑を洛に卜して、羽觴波に随へり」『白氏六帖』という。書を嗜む人には王羲之の蘭亭詩序を思い出す。
現代語にすると、「わが君(宇多天皇)は、政治をされる合間の一日を選んで、今日ここに、ありがたい上巳の宴を賜った。曲水の宴の由来は古く、その習わしは絶えてしまったとはいえ、魏の文帝は行ったものと同じである。
古人も言うように、詩は感情の表現であり、興に従い賦するもの、ここに謹んで、『花の時天花に酔へり』と詩題の小序をたてまつる。」
参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫