つごもりの日、しのび音のほととぎす(5)和泉式部日記より
5.御返事もせずに
釈文:「ことにものなどもきこえで、仏にことづけたてまつりて、明かしつ。つとめて、『めづらかにて、明かしつる』など、のたまはせて」
選字は「こ度爾毛 能奈とも支許え弖仏耳こ登つ介多 傳まつ里て明可し徒ヽと免天め徒ら可 耳て明かしつ流奈と乃多まはせて」
鑑賞:「ことづけ」口実にすること。「めづらか」は「めづらし」と異なり、珍妙な奇妙なの意味。
大意は「御返事もせずに、仏様を口実にして、そのまま夜を明かした。早朝、宮様は奇妙にも夜が明けました、などとおっしゃった。
参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社