俊成の歌道、誉高く(2)建礼門院右京大夫集から
2.刺繍を直して
釈文:「置きてしを、『けさぞ』の『ぞ』文字、『仕へむ』の『む』文字を、『や』と、『よ』とになるべかりけるとて、にはかにその夜になりて」
選字は「お幾て し越希さ曽のそ文字仕へ無の無 も志をやとよ登爾那る遍可り幾類度弖爾は可耳所農夜二な里て」
鑑賞:詞書のように直すと「ながらへてけさやうれしき老の波やちよをかけて君に仕へよ」となる。
歌意は「今朝九十の長寿の賀宴を催すことできたのはまことにうれしい、今後幾千年も長生きして仕えるように」の意。院からの贈り物の装束に刺繍するので、院の立場で詠む賀歌でなければならない。そこで、刺繍をし直すことになったわけである。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社