父君を亡くされた平親長と贈答歌を(14)建礼門院右京大夫集より

14.くちなし染めの

釈文:「くちなしの 花色衣 ぬぎかへて 藤のたもとに なるぞかなしき」

選字は「九遅那しの花色衣ぬ支か遍弖 藤の多裳とに奈る處可難志支」

鑑賞:「くちなし」この果実は熟すと紅黄色となり、これから採った黄色色素は古くから染料として使われる。その衣服は四季を通して着用された。

「花色衣」はその花の色の衣。『古今和歌集』雑体・素性法師が「山吹の花色衣主やたれ問へどことへず口なしにして」
「藤のたもと」は「藤衣の袂」で喪服の袂、喪服の袖と同意。

現代語にすると「黄色のくちなし染めの衣を脱ぎ、薄墨色のふじに衣に着替え、父の喪に服することになったのは、誠に悲しいことです。」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社