父君を亡くされた平親長と贈答歌を(8)建礼門院右京大夫集より

8.秋の暮を

釈文:「またもこむ 秋の暮をば 惜しまじな かへらぬ道の 別れだにこそ」

選字は「万多も許農秋の暮を八惜しま志 那可遍らぬ三遅農わ可連た爾こ所」

鑑賞:「惜しまじな」の「な」は詠嘆を表す終助詞。「かへらぬ道の別れ」一度行ったきり帰ってこない、死別の意。

現代語にすると「またやってくる秋の暮れを惜しまないでしょう。人の世には、二度と帰ることのない別れがあるのですから。」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社