隆房の中納言へ心置きなく歌を(1)建礼門院右京大夫集より
1.隆房に御不幸があって
釈文:「隆房の中納言の、なげくことありて籠りゐたるもとへ、こればかりは、昔のこともおのづからいひなどする人なれば、とぶらひ申すとて、五月五日に」
選字は「隆房の中納言農な希九こと阿里 弖籠り多流毛とへ古れ者可利盤昔の 故ともお能つ可羅い日奈登須る人奈連八 度布らひ申春と傳五月五日爾」
鑑賞:「隆房」藤原隆房の北の方は平清盛の女であるから昔の話もできる人であった。それで「おのづからいひなどする人」と、気を遣わないで話したりできる人と評している。
大意は「隆房の中納言に御不幸があって、引き籠もっているところへ、この方へは昔のことも気兼ねせずに話ができる人なので、お見舞い申し上げようと、五月五日に」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社