今年が最後の七夕の歌かと思ひ(5)建礼門院右京大夫集より

5.いつまで七夕の歌を

釈文:「このたびばかりやとのみ思ひても、また数つもれば、
いつまでか 七のうたを 書きつけむ 知らばやつげよ 天の彦星」

選字は「このた日盤可りやと乃み思ひて毛ま多 数つもれ者
移つま弖可那ヽ川のう堂越可支徒介 無し羅八やつ希よ天の彦星」

鑑賞:七夕に歌を詠んで五十一首を数えた。いつまでこうして、今年限りと思いながら、歌を詠みつづけるのだろうか。詠嘆のまじった最後の七夕の歌である。

もともと七夕の行事は旧暦など太陰太陽暦の七月7日に行われていた。これは、月齢およそ6の月が南西の空に輝く夜になる。

太陰太陽暦は、明治6年に現在の暦が採用されるよりも前の暦で、現在は公には使われていない。このため、「伝統的七夕の日」は、太陰太陽暦による7月7日に近い日として、国立天文台が以下のように定義している。

二十四節気の処暑(しょしょ=太陽黄経が150度になる瞬間)を含む日かそれよりも前で、処暑に最も近い朔(さく=新月)の瞬間を含む日から数えて7日目が「伝統的七夕」の日で今年は八月二十二日である。

歌意は「いったい いつまで七首の手向の歌を書きつけるのだろうか。もし知っていたら教えて欲しい、彦星よ。」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社
     国立天文台 Web page