後鳥羽帝付き女房として再び出仕し(1)建礼門院右京大夫集から

1.我が身を無用のものと

釈文:「若かりしほどより、身をようなきものに思ひとりしかば、ただ心よりほかの命のあらるるだにも厭はしきに」

選字は「わ可ヽり志本とよ梨身越ような支 裳能爾思ひと利にし可盤多ヽ心よ里 ほ可農命のあら流ヽ多耳毛い登八 し記二」

鑑賞:「ようなき」とは用無し(ヨウナシ)と要無し(エウナシ)からだが、両者は相互にまぎれ、また仮名遣いの誤りとも考えられる。意味は必要がない。無用である。つまらない。『伊勢物語』九段に「身を要なきものに思ひなして」をふまえるか。

現代語にすると「若い頃から、我が身をつまらないものと思いこんでいたので、ただ生きていたくもない命をながらえているだけでもいやで避けたいのに」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社