秋の野辺にもまさる涙の羽衣(5)建礼門院右京大夫集から
5.すっかり雨にぬれて
釈文:「露けさは 秋の野辺にも まさるらし たち別れゆく 天の羽衣」
選字は「露希さ者秋の野邉二も満さる 羅し多遅わ可れゆ具天の羽衣」
鑑賞:「たち」は「立ち」「裁ち」の懸詞。「裁ち」「天の羽衣」は縁語。七夕は陰暦で秋の季節の行事であるので、「秋の野辺」と詠んでいる。
歌意は「ひどく濡れて露がおいてある秋の野辺にもまさっているようだ。一夜が明けて、彦星と別れる織女の涙に濡れた羽衣は。」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社