「蓮」の詩歌を臨書して(3)和漢朗詠集から

3.池の水煙の中から

蓮の花は夏の季語ですが、葉は秋を呼び起こすのか。三首目の
釈文:「煙開翠扇清風暁、水泛紅衣白露秋。」許渾

書き下し文は「煙翠扇を開く清風の暁
       水紅衣を泛ぶ白露の秋」

現代語にすると「初秋の暁、清らかな風が吹く池の水煙の中から、緑の扇を広げたように、蓮の葉がひらひらしている。水には紅い衣裳を浮かべたように、蓮の花が映っている。」

鑑賞:「翠扇」翠玉のような緑色の扇。李商隠の詩に『荷(はちす)は翠扇を翻して水堂虚なり。

枕草子「蓮葉、よろづの草よりすぐれてめでたし。・・・翠翁紅とも詩に作りたるにこそ。」とあり、「翠翁紅」は「煙翠扇」ともいわれる。

参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫