懐素の自叙帖を臨書する(6)狂草と言われて
5.往々にして
釈文:「往々遇之。
豁然心胸。略
無疑滞。」
鑑賞:次第に筆の運びに勢いが出て、興に乗っている様子が伺える。「豁」は偏を広くゆったりと書き、旁は簡素にして次の「然」を小さく抑えて流れがみえる。
さらに「心」から「胸」は圧巻である。「胸」は偏と旁を上下に配置している。渇筆でも、線の動きは揺るぎない。
「無」は下に続く字を意識したと思われる。横画は長く、つぶしたような字形をもつ。「滞」の偏を筆を開いて太く書いたことと、対照的に細く軽やかである。
参考文献:自叙帖 懐素 二玄社