谷川は木の葉も氷に閉じ込めて(4)建礼門院右京大夫集より

4.今は凍っている波も春が来れば

建礼門院右京大夫集 祥香書

釈文:「うらやまし 志賀の浦わの 氷とぢ
    かへらぬ波も またかへりなむ」

選字は、「う羅やまし志賀の浦わ農こほ里とち
     か倍らぬ波もま多可遍り那無」

歌意:「寄せてくる波がうらやましいことです。琵琶湖の入江は
    氷にとざされて波は沖へ帰って行かないけれど、春にな
    って氷が溶ければまた帰っていくのでしょう。あの人は
    いつになっても帰ってこないけれど。」

鑑賞:「かへらぬ波」波は帰るものとして歌に詠まれてきまし
    た。たとえば、『後撰集』業平朝臣「いとどしく過ぎゆ
    く方の恋しきにうらやましくも帰る波かな」がありま
    す。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社