晴れも曇りも定めがない空に(1)建礼門院右京大夫集を書いて
1.曇り空のうれい
旅先の宿で、外を眺めていると、
釈文:「いたく心細き旅の住まひに、友待つ雪消えやらで、かつ
がつあまぎる空をながめつつ」
選字は、「い多久心ほ曽支旅の須まひ爾友待つ雪
消えやら傳閑つヽヽあ満支空を那可免
つヽ」
大意は、「ひどく心細い旅先の宿で、次の雪が降るまで消え残っ
ている雪が消えずに、わずかに雪で曇っている空を眺
めながら」
鑑賞:「友待つ雪」は『源氏物語』若菜上に「友待つ雪のほのか
に残れる上に、うら散り添ふ空を眺め給へり」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社