袖の氷はとけぬまま(2)建礼門院右京大夫集にて
3.雪の積もり方が
雪が降りしきる中、宿へ帰る途中
釈文:「簾を上げたれば、袖にもふところにも横雪にて入りて、
袖の上は、はらへどもやがてむらむらこほるがおもしろ
きにも、見せばやと思ふ人のなき、あはれなり。」
選字:「春た連越上け多れ者袖爾もふと
こ路に毛横雪爾て入り傳處ての上
盤ヽ羅へともや可てむらヽヽにこ本流可
於もし露支裳見せ者やと思布人
乃難きあは連奈李」
大意は、「輿に垂らしかけた簾を上げたら、袖にもふところにも
風に吹かれて横から降る雪が入ります。袖の上は払っ
ても、すぐにあちこちと凍りついてしまうのが面白く
て、見せたいと思う資盛がここにいないのが切ないの
です。」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社