大原に建礼門院を訪ねて(7)建礼門院右京大夫集より

7.墨染のお姿は

建礼門院右京大夫集 祥香書

釈文:「都は春の錦をたちかさねて、さぶらひし人人六十余人ありしかど、
    見忘るるさまにおとろへたる墨染の姿して、わづかに三四人ばかり
    ぞさぶらはるる。」

選字は、「都盤
     春の錦を堂遅かさ年て佐ふら飛し人々六十
     余人あ利志可と見忘るヽ沙ま爾お登倍多る

     墨染の姿してわ徒可爾三四人盤可利曽佐ふ
     らはるヽ」

大意は、「都では、華やかなお衣装に身を包み、お側には六十人余りも仕えて
     おりましたのに、見間違えるほど、おやつれになった墨染の法衣の
     お姿でたった三、四人ばかりが御仕えしておられます。」

鑑賞:「都は」素性法師の和歌「見わたせば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける」
    により、「錦」を導くために置いてあります。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社