大原に建礼門院を訪ねて(1)建礼門院右京大夫集より
1.心の晴れる時はなく
作者は資盛が亡くなってからというもの、沈んだ気持ちで時を過ごしてきました。さら
に、つらい噂を聞き及び心は晴れません。
釈文:「ただおなじことをのみ、晴るる世もなく思ひつつ、絶えぬ命はさすがに
ありふるに、憂きことのみ聞きかさねぬるさま、いふかたなし。
選字:「堂ヽ於奈しこと越農見晴るヽ世毛奈久思日
徒ヽ絶えぬ命者佐寸可爾阿里布るに憂
きこと能三聞支かさ年ぬる沙万いふ多無四」
大意は、「ただおなじことばかり、心が晴れる時もなく、命は絶えずに生き永らえて
いると、つらいことが多く何度も聞かされるのは言いようがないほどです。」
鑑賞:『平家物語』巻十二 六代には北条四郎時政が頼朝殿の代官として京を警護していた
折、平家の子孫を調べ、男子は一人残さず探し出すようにという触れを出したため
多くの子弟が探し出されました。
小松三位中将維盛殿の若君、六代御前も建春門院新大納言殿と隠れて暮らしていまし
たが、見つかってしまいます。仏縁のおかげで紆余曲折を経ながら文覚房という僧に
助けれる話が載っています。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社