資盛の邸跡に虫の声が(3)建礼門院右京大夫集から

3.私がもし来年も

建礼門院右京大夫集 祥香書

釈文:「我が身もし 春まであらば たづね見む
    花もその世の ことな忘れそ」

選字は、「我可身毛し春ま傳あら盤たつ年三無
     者那も處の世能こと奈志連そ」

歌意は、「私がもし春まで生きながらえていたなら、訪れてさきの春をしのび
     ましょう。花もそれまであの時のことを忘れないでおくれ。」

鑑賞:「な・・・そ」は禁止を表します。菅原道真の「東風吹かばにほひおこせよ
    梅の花あるじなしとて春をわするな」を本歌としています。

    また、式子内親王の「ながめつるけふは昔になりぬとも軒ばの梅は我を
    忘るな」(新古今和歌集)もあります。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社