昔の資盛からの手紙をすき込んで(1)建礼門院右京大夫集を書くこと

1.私の亡き後は必ず

建礼門院右京大夫集 祥香書

作者の建礼門院右京大夫は、華やかな宮中のおつとめを退いた後、思い人である資盛の
悲報に触れ悲しみに打ちひしがれます。そのつらい日々を経て、作者は資盛の言葉を思
い出します。

「ただ胸に堰き、涙に余る思ひのみなるも、なにの甲斐ぞとかなしくて、『後の世をば
 かならず思ひやれ』といひしものをさこそその際も心あわただしかりけめ。」

選字は、「多ヽむ年にせき涙耳あま流思ひ農み
     なるも何の可悲曽とか奈し具て
     後の世を八可那ら寸於も日や連登いひ

     し毛能を佐こ曽ヽの支盤も心あ利多ヽ
     志か利希め」

作者は、資盛と最後に会った時に『私の後世を弔ってほしい』と言われたのです。資盛
が亡くなるときは戦場で落ち着かず慌しかったことだろうと思いやり、泣いてばかりは
いられないと意を強くするのです。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社