雄大で勢いのある仮名の古筆(3)今城切を臨書して
3.古今和歌集雑歌下
実際に、『古今和歌集』巻第十八・雑歌下を見ていきましょう。
「忘られん時しのべとぞ 浜千鳥
行くへも 知らぬ後をとヽむる」
選字は、「わ須られ无ときしのへと曽者万ちと利
ゆ久ゑ毛しらぬあとをとヽむる」
鑑賞:「わ」から「須」へ連綿した中へ入れるように「ら」を小さく書き「れ」
の一画目を広げずに引き締めています。
特徴は、「ゆくゑ」の線の強さと粘りでしょう。筆を開きながら、筆力
を保ちながら運ぶ書線は冴え渡っています。連綿にもゆるまず、さらに
「ゑ」で横画に力を溜め解き放って終筆は軽やかです。
参考文献:書の美 島谷弘幸著 毎日新聞社