資盛へ便りをさしあげようと(3)建礼門院右京大夫集から
3.わずかな機会を見つけて
私は既に亡きものと思ってください、と都落ちの時に言われた作者でしたが、
「ただ都出でての冬、わづかなる便りにつけて、『申ししやうに、今は身を
かへたると思ふを、たれもさ思ひて、後の世をとへ』とばかりありしか
ば、たしかなる便りも知らず」
選字は、「多ヽ都出てヽの冬さ徒可奈る便利爾つ
希て申しヽやうに今盤身をかへ多
流とおもふをた連毛沙思ひて後の世を
と邊登え可り阿里し可は堂志可
難る多よ梨もし羅寸」
大意は、「ただ都落ちの寿永二年冬に、少しの便りにつけて『申し上げました
ように、今は死んだものと思っているので、皆そう思ってくださ
い。」と言ったきり、返事を出すしっかりとしたつてもなく」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社