とらわれの身となった重衡へ(2)建礼門院右京大夫集を書くとき

2.ちょっとした心遣いも

建礼門院右京大夫集 祥香書

作者は重衡の人となりを回想するします。稀に見るほど良いお方であったのに・・・
『朝夕馴れて、をかしきことをいひ、またはかなきことにも、人のためは
 便宜に心しらひありなどして、ありがたかりしを、いかなりけるむくいぞ』

選字は、「あ佐夕奈れて越可四きこ登をい日
     ま多は可奈支こ登二裳人農多免

     者便宜耳心しら非あ里なと志弖
     阿利か多可梨事をい可那る無具い所」

大意は、朝や夕方に冗談などを言って、ちょっとしたことでも人のために
都合の良くなるよう心遣いをしてくれて、稀に見るほど良い方だったのに
どのような前世の報いでしょうか。

宮中では、皆をからかって楽しませて、慕われていたお方でしたのに、残念
な思いの作者です。
 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社