変わり果てた姿の平家一門(1)建礼門院右京大夫集を書いて

1.驚くばかりの噂

建礼門院右京大夫集 祥香書

資盛が愛したという梅の花に出逢い、いくらか心が和んだ作者でしたが、
平家一門の噂が聞こえてきます。

 「その春、あさましくおそろしく聞えしことどもに、
  近く見し人々むなしくなりたる、数おほくて、あら
  ぬ姿にて渡さるる」

選字は、「所の春あ佐まし久於曽ろ志具聞え
     しこ登ヽ裳に近久見四人々む

     那事久奈梨多る数おほ久て阿ら
     ぬ姿耳天渡さるヽ」

現代語にすると、「寿永三年の春、驚くばかりおそろしい噂が聞こえてきて、
身近にお会いしていた平家一門の方々が大勢亡くなられ、変わり果てた姿で
都大路を引き回されたのです。」

親しくお付き合いした方々が、哀れにも罪人として都を引き回されたりする
ことを噂で聞いた作者は心を痛めます。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社