生きていられそうもないけれど(3)建礼門院右京大夫集から

3.これ以上つらいことを聞くことは

建礼門院右京大夫集 祥香書

気持ちがひどく動揺し、熱まで出した作者が詠んだ歌が、
「憂きうへの なほ憂きことを 聞かぬさきに
 この世のほかに なりもしなばや」

選字は、「う記有遍農な本憂きこと
     越支可ぬ佐き耳この世乃ほ可
     爾那里も志奈八や」

歌意は、「今までもつらいことがあったのに、さらに悲しいことを私が耳にしない
     内になくなってしまいたい。」

鑑賞:ここで「憂きこと」は、資盛が亡くなることを指しています。心労で、作者の気持ちは平静を保つことが難しくなっています。
 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社