あの人はどこでこの月を眺めているのだろうか(2)建礼門院右京大夫集を書きながら

2.生きている身が

建礼門院右京大夫集 祥香書

これまでにないほどの体験をして、生きている身がつらく詠んだ歌が、
釈文「またためし たぐひも知らぬ 憂きことを
   見てもさてある 身ぞうとましき


選字は、「ま多ヽ免した具日裳志らぬ憂
     記こと越三傳もさ亭阿る身所う
     登まし支」

歌意は、「他には味わったことのない辛い出来事を体験したのに、出家もせずに
     生きている我が身が嫌になります。」

作者は寿命があるのに自ら絶つことをためらい、剃髪して様が変わることや、一人
でお寺に駆け込むこともできない自分にうんざりとしています。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社