翼がないのに自然にまかせて飛ぶとは(1)荘子より

1.私自身の存在が

荘子 祥香書

「荘子・人間世篇」の中で、弟子の顔回は孔子に、ひどく荒れて乱れた国の皇帝を
正すために会いに出かけたいと言います。孔子はあれこれと提案する顔回に対し、心斎であれと助言をします。すると、顔回は

「顔回曰回之未始得使實有回也
 得使之也未始有回也可謂虚乎
 夫子曰盡矣吾語若」

書き下し文は、「顔回曰わく、回の未だ始めより使むるを得ざる時は、実に回あり。これを使むるを得るや、未だ始めより回あらず。虚と謂うべきかと。夫子曰わく、尽くせり。吾れ若に語げん。」

現代語にすると、顔回は述べた。「この私がまだ(心斉)を教えていただけなかった内は、実に私自身の存在を意識していました。教えを受けた今となると、元々私

の存在はなかったわけです。これを虚と言えますか。」
師は答えました。「十分です。私はあなたに言いましょう。」

 参考文献:荘子 金谷治訳注 岩波文庫