夢の中で夢を見ているような(2)建礼門院右京大夫集から

2.信じられない出来事が

建礼門院右京大夫集 祥香書

「といひしことの、げにさることと聞きしも、なにとかいはれむ、
 涙のほかは、言の葉もなかりしを、つひに秋の初めつかたの、
 夢のうちの夢を聞きし心ち、なににかはたとへむ。」

選字は、「といひ志
     こと能希爾佐ることヽ聞ヽ志も
     那耳と閑意盤れ無涙の本可者
  
     言の葉も那可利しを徒日二秋の
     初免つ可た農夢のう地農ゆ免を
     きヽし心ち難耳可は多と遍む」

現代語にすると「(資盛)の言ったことは、本当にもっともなことだと
聞きましたが、何を言うことができるでしょうか、涙の他に言葉も無く
ついに秋の初めに夢の中で夢を見ているような心地で何にたとえられま
しょう。

鑑賞:「夢のうちの夢」は夢の中で夢を見ているような、信じることが
    できない事柄。

   「旅の世にまた旅寝して草枕 夢のうちにも夢を見るかな」
   『千載和歌集 533 慈円』(人生は夢のようなもの、夢の中
    で夢をみるの意)

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社