夢の中で夢を見ているような(1)建礼門院右京大夫集から

1.もう生きているとは

建礼門院右京大夫集 祥香書

資盛の言葉は切実さを増します。
「よろづ、ただ今より身をかへたる身と思ひなりぬるを、なほともすれば
 もとの心になりぬべきなむ、いとくちをしき」

選字は、「よ路つ多ヽ今余り身越可倍多る
     みと思ひ奈里努流をな本度毛

     須連者裳との心耳奈利ぬ遍支
     奈無い登久遅越し支」

現代語にすると、「『全てただいまから私は亡き者と心に決めたはずなのに、
やはり以前のようになってしまいそうなのが、残念なことなのだ。』

都を捨て西国へ落ちる資盛はすでに死を覚悟していて、作者に伝えるばかり
でなく、自らをも死んだものと思ってほしいと語っています。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社