母の四十九日忌に(3)建礼門院右京大夫集より
3.阿証上人とは
詞書:「阿証上人にたてまつりなどせしに、衣のしわまでも着たりし折に変らで、おもかげいとどすすむ
かなしさに」
選字は、「阿証上人爾た天
ま徒里奈登せしに衣の志利まて毛支
多り志折爾変らて於も可希いとヽすヽ
無か奈し沙爾」
鑑賞:阿証上人は、12世紀頃、生没年不明ですが、『明月記』には印誓とあり、印西「いんせい」といった可能性
もあります。叡空より円頓戒を授かっていて法然と同道もみえます。慈悲第一とされ、東山長楽寺の住僧で
治承五年二月五日、後白河院京極の出家の戒師をつとめました。
また、元暦二年五月一日建礼門院徳子の戒師もしています。当時の貴族の間で尊敬されていた浄土教の上人です。
現代語にすると、「衣のしわまでも、生前着ておられた時と同じで、亡き母の面影がいっそう浮かんでかなしくて」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社