重衡は建礼門院右京大夫に思いを(5)建礼門院右京大夫集から
5.いつまでも忘れないと
「忘れじの 契りたがはぬ 世なりせば
たのみやせまし 君がひとこと」
選字は、「わ須連しの地き里多か者ぬ世奈利勢八
た農美や世万志記三可飛登こと」
鑑賞:この歌は、『古今集・巻十四・恋歌』「いつはりのなき世なりせば
いかばかり人の言の葉うれしからまし」に影響を受けていると思わ
れます。
これは恋歌に入ることから、誠実めいたことを言っていても、相手
の心は変わっていくのでしょう、という諦めにも近い、気持ちが表
れています。
歌意は、いつまでも忘れないと固く約束を交わしても、変わっていくのが世の
常です。あなたのその一言を頼りにしたいけれど、そうはできません。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社