平重衡は茶目っ気たっぷりに(4)建礼門院右京大夫集を書いて

4.地獄の鬼は

建礼門院右京大夫集 祥香書

鬼をげに 見ぬだにいたく 恐ろしきに
 後の世をこそ 思ひしりぬれ


選字は、「おにを希二見ぬ多耳い多久
     於曽し支爾後の世をこ所思ひ
     し利努連」

歌意は、地獄の鬼は、見なくても大層恐ろしいのに、まして後世で鬼に責められる
    のがどんなものか思いしられます。

鑑賞:「鬼」この歌の鬼は仏教から来ています。六道と呼ばれる世界があり、前世
   の行いによって来世が決まると考えられています。その中の「餓鬼道」と
   呼ばれる世界に生きる「餓鬼」は常に飢えに苦しみ、食べ物と水を手にしても

   火となってしまうため決して満たされることがないのです。
   また、「地獄道」は最も辛く苦しい世界で、鬼はそこで亡き者に苦しみを与え
   犯した罪を体験させる役目と言われます。

 この後に、重衡の身に起こることを作者は切なく思い出されることとなります。
 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社