しみじみと埋み火をかきおこし(2)建礼門院右京大夫集を書きながら
2.闇のうつつ
気のあったもの同士が、暗闇の中、わずかに残った埋み火をかきおこしながら
お互いの身の上話などをしています。
「思ふどち 夜半のうづみ火 かきおこし
闇のうつつに まとゐをぞする」
選字は、「於裳布とち夜半のう徒み火可
きお故志や三乃有つヽ爾ま登ゐ
越曽春流」
鑑賞:「闇のうつつ」は暗闇の中での現実。
古今集 恋三 「むばたまのやみのうつつはさだかなる夢にいくらも
まさらざりけり」
「まとゐ」は人々が輪になって座ること。
古今集 雑上「思ふどちまとゐせる夜は」訳は親しい者同士車座になって
いる夜は。
歌意は、気心が知れたもの同士が、夜中に埋み火をかきおこしながら、車座に
なって闇の中で現実の話をしています。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社