たとえ任官しなくても(3)建礼門院右京大夫集を書いて

3.にほひも久しく

建礼門院右京大夫集 祥香書

霜枯れの菊にも新たな花が咲いているのだから、私だってこれからが楽しみだわ。
と送ってよこしたお返しに、作者の歌が

「花といへば うつろふ色も あだなるを
 君がにほひは ひさしかるべし」

選字は、「花登い遍はうつ路布色もあ多な流を
     き見可に本日盤飛佐し可留へ志」

鑑賞:「にほひ」がここでのキーワードです。花の色はうつろいますが、「にほひ」は
    久しく変わることがないでしょう、と詠んでいます。「にほひ」の意味は、輝く
    ような美しさ、魅力・気品などありますが、この場合は、栄華。威光。

   『源氏物語 椎本』に「官位、世の中のにほひも、何とも覚えずなむ」訳(官位や
    世間での栄華も、何とも思われなくて。)とあります。

    作者は源氏物語もふまえてのお歌でしょうか。あなた様のご威光は変わることなく、
    続くことでしょう、と任官にもれた方を励まされています。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社