維盛の恋に口を挟む(1)建礼門院右京大夫集から
1.維盛に思いを寄せるひと
光源氏の再来と称されるNHK『鎌倉殿の13人』にも登場する平維盛は、作者の
思い人である資盛の兄で、清盛の孫です。あまり歌を詠むことが得意ではありま
せんでしたが、その維盛に恋のアドバイスを試みる作者です。
中程からの詞書より
「上臈だちて近くさぶらひし人の、とりわき仲よきやうなりしに、わが物申す
人のこのかみなりしは、御ゆかりのうへに、やがて宮人にて、ことにつねに
さぶらひし人、しのびて心かはして、かたみに思ひ合はぬにしもあらじと
見えしかど」
選字は、「上臈多遅て近久佐ふら日志人の登里
わ支仲よきやう奈利し爾わか物申す人の
この可み奈り志は御ゆ可利のう遍爾や可
て宮人爾てこ登二徒年二散不らひ四人
し能飛弖心か者志て可た美耳思ひ
あはぬ爾し毛阿ら四と見え志可と」
「上臈」とは上臈女房の略で、身分の高い女房のこと。尚侍(ないしのかみ)、
二位・三位の典侍(ないしのすけ)など。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社