湯治へ来た友へ歌を贈る(9)建礼門院右京大夫集から

9.秋の山里の話を

建礼門院右京大夫集 祥香書

かへりきて その見るばかり 語らなむ
 ゆかしかりつる 秋のやまざと


選字は、「可邊利きて楚の見るは可里語るら
     無遊可しか利徒る秋のや万佐と」

歌意は、どうぞお帰りになって、あなたのご覧になったままに秋の山里の様子に
    好奇心がそそられ聞いてみたいものです。

鑑賞:「ゆかし」は動詞「行く」の形容詞化。心ひかれ、そこに行きたいと思う意
   です。「床」「懐」は当て字。
   作者は都つとめの後も近くに住み、山里へはあまり出かけたことがないので
   しょう。純粋な好奇心から興味がわいている様子がうかがえます。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社