湯治に来た友へ歌を贈る(5)建礼門院右京大夫集から
5.椎の実をひろい
五句目「椎ひろふ 賤も道にや まよふらむ
霧たちこむる 秋のやまざと」
選字:「志ひヽ路布しつ毛三遅にやまよ不
羅无支梨多ち故牟る秋の山さと」
歌意:椎の実を拾う村人も、霧の立ち込めた秋の山里では道に迷うでしょうか。
鑑賞:「椎」はブナ科のシイと呼ばれる常緑高木の総称。暖地に自生し大木に
なります。果実は先のとがった卵円形で食用で特にツブラジイの実は美味。
「賎」はしづと書き、身分の卑しいこと、身分の低い者の意味ですが、
この場合は、都の貴人に対して山里の土地の者をさしています。
山里に住み暮らす人々に想いをめぐらして、気持ちを寄せている作者です。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社