湯治に来た友へ歌を贈る(2)建礼門院右京大夫集から
2.月の光が霜かと
「真柴ふく ねやの板間に もる月を
霜とやはらふ 秋のやまざと」
選字は、「真柴布久年やのい多まにもる月を
し裳とや盤羅ふ秋の山佐と」
歌意は、茅葺の家で寝床の板の間に、洩れてくる月の光を霜と思って払っておら
れることでしょうか、秋の山里では。
鑑賞:李白の『静夜思』に「牀前看月光 疑是地上霜 挙頭望山月 低頭思故郷」
現代語では「寝台の前で見る月の光は 地面に降りた霜のようだ」と前半
で詠っています。
建礼門院右京大夫は李白の詩を踏まえた上で歌っていると思われます。
「ねや」と「牀」も共通点があり、背景に教養が表れています。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社