枯野にぬれた荻は(4)建礼門院右京大夫集から
4.芽のふっくらとした若葉が
時雨に濡れた枯野の荻は、色を加えつややかで、芽のふくらんだ若葉の緑青色
がところどころに見えます。
「冬になりて、枯野の荻に、時雨はしたなくすぎて、ぬれいろのすさまじきに、
春よりさきに、下芽ぐみたる若葉の、緑青色なるがときどき見えたるに、露
は秋思ひ出でられて、置きわたりたり。」
選字は、「冬爾な利て枯野の荻爾時雨者し多なく
す支てぬ連いろ農須さま志記爾春よ利
佐支二下芽久み多る若葉の緑青色奈
るかときヽヽ見え多流爾露者秋思ひ出てら
れて置きわ多りた里」
鑑賞:「濡れ色」は水に濡れた色。
「五月雨にしをれつつ鳴くほととぎす濡れ色にこそ声も聞ゆれ」
『夫木和歌抄』があります。
ぼんやりとした色味の無い風景から、時雨によって艶やかに映り、色彩が
芽のふくらんだ緑青色の若葉へと変遷してゆきます。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社