枯野にぬれた荻は(2)建礼門院右京大夫集から

2.うらみの初風

建礼門院右京大夫集 祥香書

 釈文:「前なる垣ほに、葛はひかかり、小笹うちなびくに、
    山里は 玉まく葛の うら見えて
    小笹がはらに 秋のはつかぜ


歌の選字は、「山里は玉ま具葛のう羅みえて
       こ佐ヽ可盤らに秋乃者徒可勢」

「葛」はマメ科の多年生蔓草。
鑑賞:「浅茅原玉まく葛の裏風のうらがなしかる秋はきにけり」『後拾遺和歌集
    秋』のように、風が吹くとは葛の葉が裏を見せて飜るさまです。「うら」
    と「恨み」を掛けています。

    当時の人々は、秋の七草に数えられる花は愛でずに、風で葉裏が白く見え
    る様子を詠んだのです。一面に広がった葛の葉が風の吹くに従い白く変化
    していくのは壮観だったでしょう。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社