七夕の空を眺めて(1)建礼門院右京大夫集を書いて
1.小宰相の最期を思って
平家物語にも登場する小宰相は、都落ちの平家一門と共に船で屋島に逃れる
途中に、夫の通盛が戦死したと聞かされて世をはかなみ、浄土での再会を願っ
て身を投げました。
その小宰相をひたすらに思っていた、作者の親しい男性と歌のやり取りがあり
ました。今回はその続きです。
釈文:「など申ししをりは、ただあだごととこそ思ひしを、それゆゑ底の
藻屑とまでなりしを、あはれのためしなさは、よそにてなげきし人に折ら
れなましかば、さはあらざらまし。」
選字は、「なと申しヽ越利者たヽあ多こ登ヽ故處
思ひ志を所連ゆゑ底のも供つとまてな
利し乎阿者れ農多免四な佐盤よ所
爾轉奈希支し人爾折ら連なま志
か者散盤あ羅さら万し」
大意は、ほんの戯れこととばかり思っていましたが、通盛の後を追って海の
藻屑となったと聞いたときの嘆きといったら比べるものがないほどでした。
他の人と結ばれていたならば、こんなことにはならなかったでしょうに。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社