春の花が咲く中で(1)李白・月下獨酌四首から其ニを書く
1.もし天が酒を嫌いなら
「月下獨酌」四首連作の中から其ニを宋廣が揮毫しているので臨書をしました。
宋廣は、明初め、河南省南陽の人で、字は、昌裔。草書が得意であったと言われ
ています。
「天若不愛酒
酒星不在天」
書き下し文は、「天若し酒を愛せざれば
酒星 天に在らず」
意味は、「天がもし酒が嫌いなら、
酒星が天にあるはずがない」
鑑賞:「酒星」は酒を司る星の名前。酒旗星ともいいます。
漢の太祖が禁酒令を出した時、孔融が『天には酒旗の星があり、地には
酒泉の群を列し、人には旨酒の徳がある。故に堯は(たくさんの酒)を飲ま
ざれば、以って其の聖を成す無し』と嘲笑したという(張璠『漢紀』)*①
孔融は、太祖に反対することが多く疎んじられていたようですが、ともかく
こう言って意を唱えたわけです。そこで酒好きな李白も、孔融にあやかって
酒の星を例にあげたのでしょうか。
*出典:①漢詩と名蹟 鷲野正明著 二玄社