揺れうごく女こころの吐露(2)建礼門院右京大夫集に親しんで
2.生きていたのですね
「ありけりと いふにつらさの まさるかな
無きになしつつ 過ぐしつるほど」
選字は、「あ利希里登いふに徒ら散のま佐る
か奈無記耳奈しつヽ須具志川る本と」
鑑賞:一行目は文字をやや密着させて書き、二行目はゆったりと渇筆で余白を活かしながら、終句で一文字に見えるように塊として書きました。
歌意は、生きていたのですね、というあの人の一言で辛い気持ちがさらに勝ることです。私のことを忘れてこの世にいないかのように思って過ごしていたのかと思われて。
これほどひどいことを言われたのですから、何か反論してもよさそうなものですが、相当に気持ちが萎えてしまった建礼門院右京大夫です。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社