在原業平の一首を多面的に鑑賞する(1)関戸本古今集より

1.在原業平とは

関戸本古今集 祥香臨

在原業平は、古今集仮名序に六歌仙の一人として『その心あまりて言葉たらず。
しぼめる花の、色なくてにほひ残れるがごとし。』とあります。心情があふ
れているが、言葉が足りず、萎んだ花の色がなくなり匂いだけ残っている
ようだ、と評されています。

業平は天長二(815)〜元慶四(880)年生まれ、平城天皇の皇子安保親王の
五男。母は桓武天皇の皇女伊登内親王ですが、天長三年兄行平とともに親戚に
下って在原の姓を賜りました。

政治的にはあまり恵まれませんでしたが、善く和歌を作るとも評され、伊勢物語
のモデルといわれています。美男子であったといわれ、憧れを抱く人も多かった
と思われます。

 参考文献:和歌の解釈と鑑賞事典 井上宗雄他編 笠間書院