まことの道へ入った人さへ(3)建礼門院右京大夫集を揮毫して
3.何でも話せる友へ
作者は思い人の気持ちがわからず、揺れ動く心を友にも語れずにいます。
「何事もへだてなくと申し契りたる人のもとへ、思ひのほかに身の思ひそひてのち、さすがに、かくこそともまた聞えにくきを、いかに聞せ給ふらむとおぼえしかば」
選字は、「何事も遍た弖な具登まうし遅き
里た利し人のもとへ思ひ農ほ可爾
身能おも日曽比て乃ち佐寸可耳か久
こ楚ともまた支古えに具きをい可
耳記ヽ多ま万布らむ登らむ登於いて本えし可八」
大意は、何事も分け隔てなく、お話をする仲でしたのに物思いが重なるようになり、さすがに噂をお聞きおよびになっているだろうかと思いまして。
詞書の部分にも、流れや動きが出ているでしょうか。行がうねりをもって、これから始まる御歌を読みたい気持ちにさせてくれると良いと思います。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社