「千曲川旅情の詩」を書く(4)島崎藤村詩碑原文より

4.あたたかき光はあれど

千曲川旅情のうた 島崎藤村書 祥香臨

「ふすま之お可へ日爾とけてあは雪流る
 あた々可き光者あれと乃爾み津る香里も
 志らすあさく乃み春者可すみてむき之色

 僅可爾青し旅人乃むれ者以く津可畠中之
 道越以そきぬ暮れゆけ者あさまも見えす」

「あは雪流る」は「淡雪流る」のことです。旧仮名遣いでは、「淡い」は「あはい」と書きますので、注意が必要です。『広辞苑』の辞書をご覧になると、カタカナで横に書かれているのが、旧仮名表示です。

ここで興味深い点は、「津」の使い方です。例えば、「み津ける」や「以く津可」と用いられています。「つ」の変体かなには他に「徒」や「都」というように今では、「と」と読む文字が使われていました。「津」は現代でも「つ」と読む例です。

変体かなの用い方にも人それぞれの特徴があり、古典を学んだ時代にもよっても異なります。「津」は東村にとって、親しみがあったのかもしれません。
 参考文献:青春の詩歌 日本近代文学館編 青土社