「千曲川旅情の詩」を書く(3)島崎藤村詩碑原文より

3.わかくさも

千曲川旅情のうた 島崎藤村書 祥香臨

島崎藤村の書き振りをみていきましょう。
「千曲川旅情のうた」詩碑のタイトルなので、やや大きめにしっかりとした筆致で書かれています。「川」で伸びやかに「旅」はやや小さめにしてから「情」を大き句会て「之」につなげています。ここで、「詩」を使わずに「うた」とかなで書いているのもやさしげです。

「小諸奈留古城之本と里雲白く遊子
 か奈しむみと里奈す者こへ者もえす
 王可くさも志く爾よし無し志ろ可ね之」

注意したい字をいくつかあげますと、「本」は、一見すると「不」のように書かれています。また、「王」は「己」のように見えますので、注意が必要です。変体かなは元の字を意識せずに、繰り返し書いていると、癖が出てくることがあるので気をつけてください。

そして、「之」を「の」と読むときと、「し」と読ませる時があります。こちらは、漢文の影響でしょうか。かなと漢字だけではなく、時折混ぜれられた変体かなが不思議のリズムとなって、「うた」に変化をもたらしています。

参考文献:青春の詩歌 日本近代文学館編 青土社