一緒に踊り明かしましょう(5)良寛歌集より

5.病も知らずに

良寛歌集 祥香臨

八行目では、「乃」で左へ伸びやかな一画をひいています。「遠」では思いきって左へ三画目を長く伸ばしてバランスをとっています。

九行目の「美」は味のある字形で横画を短く省略してから左へ筆を動かしています。「耳」との一体感があり、隣の行の「乃」が生きています。

十行目に沿わせる形で十一行目は墨継をして印象的です。十行目がやや単調であるのは十一行目の大きな動きを際立たせるためでしょう。そういう意図を持ってというより自然に筆を運ぶのが、良寛の手腕といえます。特に「之」は堂々と主役級です。そして「羅」、「春」から「天」へは、かなの定石通り右へ流れています。

歌意は、秋の夜を踊り明かしました、体に病気の潜んでいるのも知らないで。
 参考文献:良寛歌集 渡辺秀英著 木耳社