安徳天皇のお誕生など(5)建礼門院右京大夫を書きつつ
5.遠い国へ流される人
前回の『文選』からの流れでしょうか。遠い国へ流される人の縁者へ向けて謳われます。
「おほやけの御かしこまりにて遠く行く人、そこそこに昨夜は泊まるなど聞きしかば、そのゆかりある人のもとへ
ふしなれぬ 野路のしのはら いかならむ
思ひやるだに 露けきものを」
選字は、「おほや希の御可しこま利耳て遠九
行く人そこヽヽによ遍者泊るなど記ヽ志
可者所の遊可りあ流人のも登へ
布志な連ぬ野路のし農はらい可
那ら無於も日や流多爾徒ゆ希きものを」
大意は、朝廷のおとがめで遠い国へ流される人の縁者へ歌を送りました。
横になったこともない野路の篠原での度寝はさぞおつらいことでしょう。都では、想像するだけで涙で袖が濡れてしまいます。
時代の変わっていくことが感じられる場面ですが、去りゆく人への作者の温かい眼差しが感じられます。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社